Jリーグ開幕30周年を迎えて
いよいよ2023シーズンのJリーグが開幕。早いもので、今年で開幕30周年を迎えます。我らがグルージャ盛岡は再び舞台をJ3に戻すことになりました。選手、監督、球団等大幅な入れ替えもあり正に新体制となって先ずはJ2昇格を目指すこととなるようです。昨年は私もあるきっかけからJリーグとの関わりを持たせて頂きましたが、改めてサッカーとは?Jリーグとは?という問いを考える時間になりました。
答えや結論はまだありません。ただ、サッカーが、スポーツが人々の生活や社会に与える影響はとても大きいものだということを痛感しました。Jリーグの場合、チームはその地域と共存するものであることが前提です。選手、スタッフ、球団、サポーター、自治体、スポンサー、更にそれに関わる人やチームのことは知らなくともその住民である人までを含めた全ての人々でチームが作られているのではないかと私は思いました。とは言っても 恐らくJのチームはそれぞれ様々な問題を抱えながら運営していることも理解出来ました。チームが試合で勝つこと、チームが強くなることで解決する問題もあるかもしれませんが、それが全てではないと言う事も事実です。事実上チームを牽引する人たち、それは球団でありメインスポンサーであったりと思われますが、その人たちが試合やその結果だけでなく様々な方向に目や耳を傾けることが重要なのだと思います。
先日、リーガエスパニョーラ(スペインリーグ一部)第17節レアルソシエダvsアスレティック・ビルバオ戦が行われました。久保選手が相手ディフェンダーの股間を抜き鮮やかにゴールを決めたシーンは印象的でした。スペイン北部のバスク地方にホームを置くこの2チームの対戦はバスクダービーとも呼ばれバスク人にとってはお祭りのような試合のようです。それぞれのサポーターがそれぞれののユニフォームを着て入り混じるようにスタジアムに座ります。他の地域で行われる伝統的ダービーにある一触即発のような空気は全くなく、お互いのチームをリスペクトしあいダービーというイベントを共に楽しんでいる感じです。試合前にはバスク地方の踊りなどがピッチ上でもようされ、選手も一緒に鑑賞します。一度キックオフのホイッスルが吹かれれば、お互いに激しいぶつかり合いになりますが相手を削るようなプレーはありません。
ダービーそしてリスペクト
ダービーだからこその意地のぶつかり合いとお互いのリスペクト。単なるリーグ戦の一試合ではない、バスク人にとってもっと大きなそして大切な試合のようです。このレアルソシエダとアスレティックビルバオというチームは共に地元バスク人選手が多いチームとしても知られています。アスレティックに至ってはバスク人だけのチームです。それだけ選手を限定しながら国のトップリーグの位置を維持していることは世界のクラブチームを見てもそうないのではないでしょうか。
地域と一体化したカンテラ
その要因の一つはカンテラ(選手の育成)組織の充実とも言われています。両チームともトップチームにカンテラ出身者率が非常に高いという数字からも伺えます。スペイン代表にも選ばれる選手がいることを見れば育成レベルの高さも伺えるのではないでしょうか。ここバスク地方にあるサンセバスチャンと言えば美食の街、バルの街としても知られています。人口比率で見る星付きレストランの数が世界一多いという話もあります。料理人の育成もバスク流があるようです。ダービーマッチを観ながら、地元の食材で美味い肴と美味い酒。こんな楽しいことはないですね!「地域とクラブチームとその関係」その理想の一つがここバスクにあるような気がします。
さて今期のグルージャ盛岡はどんなサッカーをするのか。松原新監督はどんなサッカー、どんなチームを目指すのか。秋田球団代表はグルージャを盛岡を岩手をどう考えるのか。などと言いながら、かくいう私も南部せんべいをつまみに、あーだこーだ言っているのが楽しいのかも知れません。2023シーズンもよろしくお願いいたします!
佐々木徹勝
(註)この記事は2023.2.14刊行の「グルージャ・カモメ通信」を転載しました。
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